太陽の基本
太陽は地球のガーディアン
「太陽が活発な極大期では地球に発生する雲が少なくなり、
太陽の光が雲で反射されず地表にとどき、結果として地球の気温が高くなる」
とはどういうことなのでしょうか。
じつは、宇宙には宇宙線とよばれる放射線がただよっています。
もちろん、放射線なので生命には有害であり、
たとえば、宇宙飛行士はこの宇宙線を浴びすぎないように、
宇宙船や宇宙ステーションでの滞在期間を調整する必要があります。
いっぽう、地上で暮らすわたしたちは宇宙線の影響を受けません。
というのも、地球の大気や磁気圏が宇宙線の強さをやわらげるからです。
そのようにやわらげられた宇宙線は、レントゲン撮影の放射線よりも弱くなっています。
また、わたしたちは地球の大気や磁気圏だけにまもられているわけではなく、
太陽にもまもられています。
太陽は光だけでなく〈太陽風〉とよばれるプラズマのガスも発しており、
その太陽風は宇宙線をかなりの程度ふせぎます。まさに、
太陽は地球のガーディアンなのです。そして、
この太陽風によってまもられたゾーンのことを〈太陽圏〉といいます。
・太陽風にまもられた地球(イラスト)
地球にふりそそぐ宇宙線
太陽が活発な極大期には太陽圏は強くなり、宇宙線をたくさんふせぎます。
しかし、太陽が活発でない極小期には太陽圏は弱くなり、宇宙線をそれほどふせげなくなります。
そうすると、太陽圏がふせぎきれなかった有害な宇宙線が地球にかずおおくふりそそぐことになります。
だからといって、すぐに地球上の生命がすべてほろびてしまう、
ということはありません。宇宙線によって生命の遺伝子の突然変異が起こりやすくなる、
というていどの変化が生じるだけでしょう。
アメコミの世界には、ぐうぜん宇宙線を浴びることで、
超人的能力にめざめたスーパーヒーロー集団〈ファンタスティック・フォー〉がいますが、
すくなくとも、地球やその近くに存在する宇宙線でスーパーヒーローになれる可能性はゼロです。
スーパーヒーローにあこがれているこどもたちには残念ですが。
それでは、宇宙線が地球の生命にあたえる影響はそれほど大きくない、
と考えていいのでしょうか。じつはそうではありません。
というのも、宇宙線は地球の気候に大きな影響をあたえている、と考えられているからです。
宇宙線と雲
〈スヴェンスマルク仮説〉という仮説があります。
まえに述べた「太陽が活発な極大期では地球に発生する雲が少なくなり、
太陽の光が雲で反射されず地表にとどき、結果として地球の気温が高くなる」
という仮説のことです。
それでは、その仮説ではどういうはたらきによって、
地球の気温が上下するのでしょうか。それは、
「地球にふりそそぐ宇宙線が大気をイオン化して雲の原料となるエアロゾルを増やしているため、
あるいは、宇宙線が地球の大気に直接的に作用し雲の量を増やしているため、
宇宙線の量が増えれば地球に発生する雲が多くなり、地球の気温が低くなる。
ぎゃくに、宇宙線の量が減れば地球に発生する雲が少なくなり、地球の気温が高くなる」
というものです。
スノーボール・アース
ところで、過去に地球は何度もスノーボール・アースという現象にみまわれました。
この現象は、地球が北極・南極の付近だけでなく赤道付近まで、
すべての表面が氷でおおわれる、というものです。
通常の氷河期では赤道付近まで氷におおわれることはない、
ということを考えると、スノーボール・アースがすさまじい現象であることがわかります。
じっさい、スノーボール・アースをうらづける考古学的証拠もあります。
しかし、そのような現象があったことは確実であるにもかかわらず、
なぜそれが起きたのか、という謎はのこされたままでした。
そのスノーボール・アースの謎が、スヴェンスマルク仮説によって解決されるかもしれません。
じつは、太陽系は銀河系のなかを移動しているのですが、
たまたま太陽系が宇宙線の強い領域に入ってしまうと、
太陽圏でふせげる宇宙線にはかぎりがありますから、
それをとおりぬけて宇宙線が地球にきわめて大量にふりそそぎます。
そうなってしまうと、地球の雲が多くなり、どんどん気温が低くなってゆきます。
結果として、地球のすべての表面が氷でおおわれてしまった、と考えられています。
そして、しばらく時間が経って、太陽系が宇宙線の強い領域から出ると、
地球にふりそそぐ宇宙線の量が減るとともに地球の雲も少なくなり、
気温が少しづつ上昇してゆき、氷もとけていった、と考えられています。
・スノーボール・アース(イラスト)
赤道直下ですら氷河で覆われていた、と考えられている。
Oleg Kuznetsov, "Snowball Huronian",
CC BY-SA 4.0,
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Snowball_Huronian.jpg
太陽と地球との関係
もっとも、ここで紹介した説はまだ仮説の段階ですので、
将来的にはべつの有力説が提唱されるかもしれません。
しかし、太陽と地球とは密接な関係でむすばれている、
ということは理解していただけたでしょう。
それでは、地球にとって太陽はつねにガーディアンであり、
信頼のおける味方なのでしょうか。残念ながら、それにたいする答えは "No" です。
ときとして、太陽は地球にたいして情け容赦のない災害をもたらします。
その一つとして〈コロナ質量放出 CME〉が挙げられます。